ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
「なに……?」

 局長が眉をひそめる。その背後で、監察官たちもざわついた。
 アリアは震える手で、包まれた布を広げる。

「……これは五十年前、ルガード公爵家が流通させていた偽造通貨の鋳型です。最近王都で流通していた偽硬貨も当時の物でした。クラヴィス家やエレナ様とは一切関わりがありません」

 広間は一瞬にしてざわつきに包まれた。

 審問官たちのざわめき、監察局長の鋭い視線、傍聴席の後ろで笑みを消したユーリの瞳――そのすべてが、アリアに突き刺さる。

「静粛に!」

 局長が手を振り下ろすと、ざわめきは一応収まった。
 その冷ややかな視線が、証言台に立つアリアへ注がれる。

「戯言を…貴様のような下賤の身が、何を知る」

「クラヴィス嬢が陥れられようとしていること……そして、五十年前に何があったのか、をです」

 その瞬間、広間の空気が張り詰めた。
 王族、貴族、審問官――誰もが続きを待っている。

「私はグレイヴナー宰相と共に、地下書庫で古い記録を目にしました」

 ざわ、と再び場が揺れる。

「そこには、ルガード公爵家が五十年前に何をしていたかが記されていました。西部の鉱山を独占し、子どもにまで過酷な労働を強制した。そして、王政に背き偽造通貨を流通させていたこともです」

 嘘でも脚色でもない。
 自分が確かに読んだ、あの保全区画の記録。

「当時監察局長だったクラヴィス家を恨み、ルガード家が取り潰された復讐を果たそうとしている。そして、その事実を知ったグレイヴナー宰相は陥れられただけです!」

「異議あり!証人の発言には何ら裏付けがありません」

 立ち上がったのは監察官の一人が書類を打ちつけるように机に置くと、鋭い目でアリアを睨んだ。

「私は嘘なんてついていません…っ」

「ならば証拠を示せ。お前が言う『古い記録』とはどこにある?」

「それは……っ」

 地下書庫で確かに見たはずの記録。
 だがあれはその場で王宮監察局に没収され、もう手元にはない。

「答えられぬということは、この厳粛な審問会をかく乱するための虚偽の証言だな。この証人を拘束せよ」

 命令が下った瞬間、近衛兵たちがアリアに歩み寄る。
 数人がかりで肩を掴まれ、羽交い絞めにされそうになったとき。


「彼女を離せ」


 その鋭い声が、広間に響いた。

 重い扉が開き、堂々と姿を現したのは――セドリックだった。


「証拠なら、ここにある」


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