この恋、史上最凶につき。

第十四話 デート日和?



 休日の朝、窓を叩く風より先に、スマホが震えた。
『外 着いた』――短いメッセージ。

「え、もう……?」

 慌てて支度をして玄関を開けると、
 門の前に黒いパーカー姿の時雨くんが寄りかかっていた。

 視線が、ゆっくり私を舐めるみたいに降りてくる。

「……雪菜」

「な、なに?」

「似合いすぎ。――やばい」

 低い声で一言。
 ほんの一瞬、彼の喉が上下に動いたのがわかった。

「そんな格好で俺以外の視界に入るなよ」

「私服、変だった……?」

「逆。可愛すぎて無理」

 無理って何……と思う間もなく、
 手首を掴まれて胸元に引き寄せられる。

「行くぞ。早くしねぇと……俺、抑えらんねぇ」




 駅前につくと、人が多くて驚いた。
 その瞬間、私の腰に時雨くんの手が回る。

「……人、多いな。雪菜にぶつかったら殺す」

「時雨くん、物騒だよ……」

「事実だし」

 当たり前みたいに私をガードして歩く彼。
 歩道の端に寄せてくれたり、目が合った男子を牽制するように睨んだり、
 守られてるっていうより――囲われてる、みたい。

「雪菜、こっち寄れ」

 背中に回された腕が、だんだん強く締まってくる。

「そんな近く……歩けないよ?」

「歩け。俺の隣で」



「今日はね、俺が全部決める日」

「全部って……?」

「昼飯も、行く場所も、休憩も」

 休憩……の言い方が少し危ない。

「雪菜は隣にいるだけでいい。俺が全部連れてく」

 彼の声が妙に自信に満ちていて、
 気づけば私は手をしっかり握られていた。



 歩いていると、すれ違う男子の視線が明らかにこちらへ向いた。
 私服のせいかな、と思ったけれど――

「……見んなよ」

 時雨くんが小さく毒を吐いた。

「雪菜、俺の隣にいるのに……他の奴の視線が来んのムカつく」

「私なんて、そんな……」

「“そんな”とか言うな。雪菜は可愛いんだよ」

 目を合わせると、
 時雨くんのまなざしがいつもより赤みを帯びて見える。

「俺が欲しくなるくらいには、可愛いんだよ」

「……っ」

「隣、離れんなよ?」

 そう言いながら指を絡め直してくる。

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