この恋、史上最凶につき。
第二十五話 学校
夏休みが終わった朝。
涼しい風が吹いて、蝉の声も少し小さくなっていた。
(今日から、また学校……)
けれど寂しさより、時雨くんに会う嬉しさが勝ってしまう。
玄関を開けると——
「雪菜」
「時雨くん……!」
伊達家の前で、いつもと同じように待っていた。
夏休み中ほとんど会っていたのに、胸が跳ねる。
「おはよう。……行こ」
「うん」
歩き始めてすぐだった。
そっと並んだ手が触れた。
ほんの一瞬、指先がかすめただけ。
(……あ)
そのまま、お互い自然に指を絡めた。
“繋いでいい?”なんて言葉はいらなかった。
夏休みに何度も触れた手の温度は、
もう離れる方が不自然に思えるくらい馴染んでいる。
「……やっぱ、雪菜の手あったけぇな」
「時雨くんこそ」
ふたりとも少し照れてるのに、誰も離そうとしない。
校門が見えると、周囲がざわつく。
「え、手つないでる……?」
「夏休み、なんかあったのかな」
「伊達さん、絶対狙われるじゃん……」
いろんな声が聞こえる。
(やっぱり、噂になっちゃうよね……)
でも時雨くんは平然としていて、
私の手を離すどころか、むしろほんの少し強く握った。
「雪菜。気にすんな。
離す理由、ねぇし」
「……うん」
それだけで胸の不安がふっと消えていく。
*
教室に近づくと、時雨くんがふいに私を引き寄せた。
手は繋いだまま、体が軽くぶつかる。
「夏休み終わっても、俺らは変わんねぇよ」
「変わらないね……」
「むしろ……もっと好きになってる」
「っ……!」
手を繋いだまま言うなんて反則だ。
廊下の女子たちがひそひそと話す。
「え、あんな顔……織田って伊達さんにだけ優しいよね」
「いや距離近っ……かわいいんだけど」
その視線も、時雨くんには届かない。
「見んなよ、こっち」
小さく呟いた声は、低くて独占欲で満ちていた。
——夏休みが終わっても
手の温度も、距離も、気持ちも。
どれも深くなっていた。