この恋、史上最凶につき。
第六話 嫉妬の矢、向けられるのは私
翌朝、時雨くんと手を繋いで学校へ向かったことは、どうやら瞬く間に全校に広がったらしい。
校門をくぐった瞬間から、視線が刺さる。
「ねぇ、見た? 織田時雨と一緒にいるあの子」
「どこの誰? 新入生だよね?」
「え、てか手繋いでたよね、絶対」
「うそでしょ……私、一年の中で狙うつもりだったのに……」
全部聞こえる。
全部聞きたくない。
だけどそのざわつきの中心で、
時雨くんはいつも通り無表情だった。
いや、正確には——
私の肩に手を置いて、周囲に堂々と見せつけている顔。
「雪菜」
名前を呼ばれた瞬間、胸がぎゅっとなる。
「下向くなって言ったよな」
「……でも、みんな見てるから……」
周りの視線が痛い。
恥ずかしさで顔が熱くなる。
だけど時雨くんは、わざと周囲に聞こえるように言う。
「見られて困ることなんかねぇだろ。雪菜は俺の隣にいるんだから」
……本当に、この人は。
こういうところが、心臓に悪い。
けれど、その“俺の隣”という言葉に、不思議と安心してしまう自分がいた。
廊下を歩くと、女子たちが露骨に目で追ってくる。
噂を確かめるみたいに。
「……すごい視線だね……」
「気にすんな」
時雨くんは軽く肩に手を回し、こちらに引き寄せる。
「俺が守るから」
その言葉だけは、どんな視線よりも強かった。