【香る物語】香りの檻
なにが起きたのかわからない。不安な気持ちを抑えようと、いつもの癖で浅く息を吸い、長く止める。けれども、それさえできない。あまりの痛みに、うまく息を吸い込めない。
急に寒気がする。
目に映るのは街灯に照らされたアスファルト。キラキラ光り、妙に綺麗だった。それが次第にぼやけていく。頬が冷たいのは、地面に倒れているから?
耳の奥が塞がっていくような感覚とともに、周りの音が少しずつ遠のいていく。ヤツが何かを言っているが、ただのBGMにしか聞こえない。それでも、救急車の音が近づいてくるのはわかる。
ヤツの声はもう、聞こえない。
きっとさっき、『死んだほうがマシ』って思ったから、こうなっているんだ。
激痛とともに体が動かされる。でも頭を持ち上げることすらできず、何が起きているのか確認できない。
夜の春風に乗って、花びらが目の前にゆらりと落ちてきた。同時に、アールグレイに混ざった清潔感のある香りが、わずかな空気とともに細く鼻を通る。
あっ、この香り……好き。
安心する。
「……穂乃香」
私、また呼ばれてるの?
「穂乃香!」
再び呼ばれた自分の名前が、はっきりと耳に届く。それはヤツの声ではない。聞き慣れた声。
その声にほっとしたのか、急に瞼が重くなった。
急に寒気がする。
目に映るのは街灯に照らされたアスファルト。キラキラ光り、妙に綺麗だった。それが次第にぼやけていく。頬が冷たいのは、地面に倒れているから?
耳の奥が塞がっていくような感覚とともに、周りの音が少しずつ遠のいていく。ヤツが何かを言っているが、ただのBGMにしか聞こえない。それでも、救急車の音が近づいてくるのはわかる。
ヤツの声はもう、聞こえない。
きっとさっき、『死んだほうがマシ』って思ったから、こうなっているんだ。
激痛とともに体が動かされる。でも頭を持ち上げることすらできず、何が起きているのか確認できない。
夜の春風に乗って、花びらが目の前にゆらりと落ちてきた。同時に、アールグレイに混ざった清潔感のある香りが、わずかな空気とともに細く鼻を通る。
あっ、この香り……好き。
安心する。
「……穂乃香」
私、また呼ばれてるの?
「穂乃香!」
再び呼ばれた自分の名前が、はっきりと耳に届く。それはヤツの声ではない。聞き慣れた声。
その声にほっとしたのか、急に瞼が重くなった。
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