断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…

26

 静まり返った部屋にウィルフレッドの二人きりなり、あれだけ会いたかったのに緊張して顔が見れない。心臓が煩すぎて、聞こえてしまうんじゃないかと心配になる。

(ど、どうしよう…)

 もじもじと躊躇しているリーゼの後姿を見たウィルフレッドは「クスッ」と微笑み、優しく包み込んだ。

「おや?俺の姫様は随分恥ずかしがりのようだな?」

 リーゼの為にわざと茶化すような言い方で問いかけてくれた。戦場帰りで疲れているだろうに、ちゃんと自分に気を使ってくれることが嬉しくて申し訳ない…

 ゆっくりと顔を向けるが…

「ーん゛!?」

 待てないとばかりにグイッと顔を持ち上げられ、唇を重ねられた。

 そのまま押し倒される形でベッドに倒れ込んだが、唇は離してくれない。新鮮な空気を求める為に口を開ければ、舌が入り込んできて更に苦しくなる。

「んんん゛~……!!」

 必死に訴えると、ようやく唇が離れた。

「は、堪らんな…」
「へ?」

 とろんと蕩けた表情のリーゼに、ウィルフレッドは舌なめずりをしながら見下ろした。その眼は捕食者の様だったが、恐さよりも色気の方が勝っていて目のやり場に困る。

「考え事か?」

 首筋にキスされ、ビクッと身体が反応する。

「…それとも、他の男の事でも考えているのか?」

 目を細めながら胸元の痕をなぞり言われ、慌てて「違う!!」とウィルフレッドも驚くほどの声が出た。

「私が想う人はただ一人です。例え話でも誤解されるような言葉は慎んでください。こればかりはウィル様でも許しませんよ」

 はっきり告げると、ウィルフレッドは一瞬目を見開いていたが、すぐに笑い出した。

「あはははは!!そうだな。すまない俺が悪かった。俺はロドルフに嫉妬していたんだ」
「するほどの価値はありませんよ」
「ああ、だが、このような痕を付けられた…」

(んなっ!!)

 眉を下げて落ち込む姿は、まるで大型犬のようで堪らなく可愛い。
 普段は団長として勇ましい姿で剣を振るっているのに、このギャップは反則だ。完全に胸を撃ち抜かれてしまった。

「あ、あの…じゃ、じゃぁ、ウィル様が上書きしてくれますか…?」

 真赤に染まった顔でリーゼが問いかけた。

 普段では絶対にこんな恥しい事言わないが、今のウィルフレッドを見ていたら自然と口から出ていた。問いかけられたウィルフレッドは、驚きのあまり言葉を失っているようだった。
 その姿を見て、リーゼは急に羞恥心が込み上げてきて「す、すみません!!」と体を起こし誤解を解こうとしたが、肩を押されて再びベッドに倒れ込んだ。

 リーゼの目に飛び込んできたのは、大型犬が獰猛な野獣に変わった姿だった。

「煽ったのはお前だぞ。…止めるなら今だ。これ以上は待たんぞ」

 覆い被さりながら最終通告をされるが、リーゼの心は決まっている。
 黙ったままウィルフレッドの首に抱き着いた。ウィルフレッドは眉を歪め、リーゼを力強く抱きしめ返すと、どちらともなく唇を合わせた。



 ❊❊❊



 その後、ロドルフとアリアナの処分が決まったと教えられた。

 まずアリアナだが…この女、戦場で数人の騎士と身体の関係を持っていた。その事実を聞いたロドルフは驚愕とは言い表せない表情で、アリアナを見ていたらしい。信じて送り出したのに、見事に裏切られたんだ当然だろう。

 アリアナは最後まで「わたくしは皆の為に…!!」と自分は悪くないと主張していたが、そんな主張が通るはずもなく、北部にある最果ての修道院に送られることになった。
 そこは監獄よりも厳しく寂しい場所だ。少しは自分の今後と向き合ってくれればいいが…今の段階では無理だろう。

 アリアナと関係を持った騎士も、除隊や降格の処分が下った。

 そしてロドルフだが、思っていた通り王位継承権の剥奪。廃嫡が決まった。なによりも、リーゼを誘拐したということで父と兄であるマティアスの怒りが収まらず極刑を望んでいたが、下手な刑を言い渡すよりプライドの塊であるロドルフは、身分を失った後の方が地獄になるとリーゼに言及され大人しくなった。

 当のロドルフだが、アリアナの事が余程ショックだったのか処分を言い渡されても反論することなく、黙ったまま茫然としていた。
 今後は、細々と生活していくことになるだろう。

 そして、ウィルフレッドとリーゼだが──……




「「おめでとう!!」」
「ありがとう」

 雲一つない青天の今日、真っ白なドレスに身を包んだリーゼは、沢山の人に見送られながらウィルフレッドの元へ嫁いでいく。

「本当にいいのかい?いくらなんでも早急すぎるだろ?よく考えた方がいいよ?」

 心配そうにリーゼに声を掛けるのは、シスコンの兄マティアスだ。

「もう、いい加減になさい」
「だってさ…!!」

 涙目になりながら訴えるが、父と母に宥められていた。

「相変わらずだな」

 クスクスと笑いながら入って来たのは、これまた真っ白なタキシードに身を包んだウィルフレッドだった。いつもとは違った装いにドキッと胸が高鳴る。

「ようやくこの日が来たな」
「ふふっ、子供みたいですね」
「余裕がなくてかっこ悪いだろ?」
「いいえ。とても素敵ですよ」

 差し出された手を取り、みんなの待つ会場へと足を進める。

「リーゼ、愛してる。もう逃がさんからな」
「私も愛してます。しっかり私の手を握っていてくださいね?」
「上等だ」

 軽くキスを交わすと、大きな扉が開き大きな拍手と共に歓声が上がった……





















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