魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
パチリと、キョウが指先を鳴らし。
一秒後には私たちは、マンションの玄関まで戻っていた。

すっかり日が落ちている。

「夕食、居る?」

キョウの言葉に私は首を横に振った。

「ユリア?」

ブーツを脱いだまま、玄関先で立ち上がらない私を見てキョウが抱き上げてくれる。

「お風呂に入っておいで」

黙りこくっている私を見て、キョウがそう言ってくれた。

一言も言い返す気力も起きず、私はそれに従う。

一人でバスルームに入って、硝煙の匂いがついた服を全て纏めて洗濯機に投げ込んだ。

熱いお湯を身体にかける。
熱いシャワーで何もかも、洗い流せればいいのに。

私は頭の先からシャワーを浴びながら、一緒に涙も流していた。


なんていう、絶対的な力の差。
不条理なまでに、絶対的な存在感の差。

キョウにそれを見せ付けられたことが、ヤクザに銃口を向けられたことよりずっと怖かった。

明日キョウが私に飽きたら、彼はすぐに姿を消すことが出来るのだ。
私の記憶を全て消して。


……なんて、不公平な関係。
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