魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
28.荒野の果てに
――結局。

手伝えることもなかったみたいで、あっという間に数日が過ぎ、土曜日がやってきた。
綾香は学校に出てこなかったし、エイイチロウさんもうちにはやってこなかった。

ジャックとは相変わらず……。
つかず離れず、みたいな。

こう、微妙な距離が続いている。

私、本当にあの夜ジャックと関係を持ったのかしら。
どうも、今となってはそれ自体が怪しい思い込みのような気にすらなっていた。

私はちょっと大人っぽいスーツを選んで着る。

でも、この服いつ買ったのかしら?
驚くくらいたくさんの、高級そうでセンスの良い服が私のクローゼットには平然と並んでいた。
しかも、どれもこれも私のサイズにぴったりなの。

高級感から、ママからの贈り物だと思いたいところだけど、残念ながらピンクハウスが大好きなうちのママに、こんなにシックなグレイで光沢のあるスーツを選ぶセンスがあるとは思えない。

ズキン。

久しく感じていなかった頭痛が、また、走って私は思わず顔を顰めた。


『馬子にも衣装だね』

頭を過ぎるテノールの声。

痛い。
頭も、胸も。

ばらばらになりそうなくらいに、痛い。

……私、病気なのかもしれないわ。

冬休みに一度、病院に行こうかしらなんて考えながら、同じくめかしこんだジャック、エイイチロウさんと共にタクシーに乗り込んだ。
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