魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「なんだか、楽しそうだね」

ふわぁと、緊張感のない伸びをしながらジャックが寝室から出てきた。
自分で、サーバーからコーヒーを入れてきた。

「全然」
「そう!」

私とエイイチロウさんは全く違うことを同時に言う。

楽しくないっつーの!

膨れている私を見て、ジャックがくすりと笑う。
どきりとするほど透明感のある笑顔に、私は思わず見蕩れてしまう。

エイイチロウさんが、簡潔に今までのやりとりを説明してくれる。
ジャックも笑ったけど、それはバカにしているような笑いではなかった。

……と、思うんだけど。
錯覚?

「うーん、追っかけると逃げる、ねぇ」

「何かの歌詞らしいんだけど。
一理ある気もしない?」

「どうかなぁ」

ジャックもあまり乗り気ではない。

「お金で解決するなら、今すぐ渡してやればいいと思うんだけど。
なんていうか、そのおっさんの性癖が気になるね」

まるで違う方向から話を展開してくるのがその証拠。

「もうちょっと調べてくる。
とりあえず、土曜日が見合いって言うから、それまでに何か見つかるかもしれないし」

それが、エイイチロウさんの結論だった。

「手伝えることがあったら何でも言ってね」

ジャックが、猫を思わせる伸びをしてから、緊張感もなくそう言った。
< 257 / 390 >

この作品をシェア

pagetop