魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「荒野の果てに 夕日は落ちて 妙なる調べ 天より響く
 
 羊を守る 野辺の牧人 天なる歌を 喜び聞きぬ
 
 御歌を聞きて 羊飼いらは 馬槽に伏せる 御子を拝みぬ
 
 今日しも御子は 生まれ給いぬ よろずの民よ 勇みて歌え」


さっきの曲を、今度は、キョウが日本語で歌う。
子守唄でも歌うかのように、優しく、囁くように。

Gloria in excelsis Deo(グローリア インエクシェルシスデオ)と、サビで繰り返されるのがとても印象的で、私も一緒に歌えればよかったのにと、少しだけ後悔した。

そんなことを思いながらも子供のように嗚咽が止まらない私の背中を、キョウの手が優しく撫でていく。

「何、これ?
助けてあげたのに、あてつけるワケ?
ほんっと、酷いよね。
いっそ、地獄に落ちちゃえばいいのに。結局リリーだって全然良い子じゃないじゃない?かいかぶって損しちゃった。
そのうえ、わざわざ地球の神に何度賛美を歌ったら気が済むっていうの?
なんか、むかつくわー。
とにかくさ、仕事は全部終わったみたいだから、帰るけど。
絶対に挨拶に来なさいよ?百度参りくらいしなさいよ?
むしろ、こっちに賛美を歌うべきなんじゃないの?」

神様の喚きたてる声に、キョウがくすりと笑う。

「嫌だなぁ。
何、誤解されてるんですか?
俺の言う<神>は、いつだってあなたのことに他なりませんよ?
分かってるくせに、あなたらしくない」

耳に心地良い滑らかなテノールが、歌うように滑る。

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