魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
キラン、と。
黒曜石の瞳が一瞬、ゴールドの色を発する。

そうして、テーブル越しにキョウの手が私に伸びる。
形の良い瞳を細め、心のうちを探るように見つめてくる。
その指先が、顎から耳へと擽るような優しさで移動していく。

「浮気なんて、してないもんっ」

「そうだね。
ユリアはすっかり俺のことなんて忘れちゃってたから、浮気とは言い難いよね。
別に、いいよ?
そんなこと、ぐだぐだいうような心の狭い男じゃないし」

えーっと、キョウ様?
あなたのその目は口ほどにモノを言ってますが。

ねぇ、その目!
ぐだぐだぐだぐだ言ってますよ。

耳まで這い上がったその細い指は、ゆっくりと唇に触れ、今度は私の頭を抱き寄せた。

「キョ……」

言葉を発する前に、テーブル越しに彼は私を抱き寄せ、唇を重ねる。

「ちょっとっ」

「静かにしていたほうがいいよ。
このドア、別に防音ってわけじゃないし、鍵もかかってないし」

テノールの声が、強気に響く。

ああ、駄目だ。
スイッチが入っちゃってる。

私は必死に言葉を捜す。

「分かった。
ね、久しぶりだから声を出せないのは困るわ。
私、我慢できないもんっ。
続きはうちに帰ってから、ね?」

……自分で言って赤面するような台詞を、いつからさらりと吐けるようになったのかしら。
怖ろしい。

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