魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
彼が買っている本について聞いたとき、なんていったっけ?

『そりゃ、もちろん。
ユリアを喜ばせるための本☆』

……わ、分かりづらいわよっ。

そこまで真剣に見ていた本が、フランス語のテキストだったなんて。
想像しろというほうが、無理な話。
それとも、あの姿を見ていかがわしい本だと決め付けてしまった私が悪いのかしら?
え、そうなのかしら?

それも、私があのカレンダーを見てクリスマスに「グラン・プラス」に行って見たいって言ったから……だなんて。

そうやって。
いつもいつも。
私の知らないところで勝手に努力されても……。

困るんですけど。

キュン、となる心臓を押さえながらため息をつくほかない。

「ま、結局のところ諦めたみたいだけど。
それで、せめてものお詫びにフランス語で唄ってみたみたいだよ。あの、『Les Anges dans nos Campagnes』」

神様がくすりと笑う。
それは、子供の頑張りを褒めるような上から目線の笑いに見えた。
ゆらり、と、長い金髪が揺れる。

あの時は分からなかったけれど、今なら、この近寄り難いオーラを感じずにはいられなかった。
性別を超越したような美貌を持つこの方の周りを、黄金のオーラが取り巻いているようにしか見えないんだもの。

まさか、つい数時間前にホテルで手を掴まれて、傷害現場から逃してくれたのがこの方だなんて、ちょっともう信じられないほどだった。
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