魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「じゃあ、特別に教えてあげようか?
リリーには貸しがあるし」

柔らかい声に瞳を開ける。
そこは、眩しいくらいに白一色の世界で私は思わず瞳を細めた。

「ああ、周りの景色は見えないようにしてあるよ。
嫌でしょう?神の世界の記憶があるなんて、ねぇ。まるでそれじゃ一度死んだ人みたいだ……。
って、そうか。
君は一度死んだんだよねぇ」

笑いを含んだ柔らかい声は、流暢な英語を口にしていた。
慣れた瞳に映るのは、マネキンかはたまたよく出来たCGのように綺麗な顔をした<魔界の神様>が優美に微笑んでいる姿。
ギリシャ神話でしかお目にかかれないような白いローブが、均整の取れたその身体にとてつもなくよく似合っていた。

「……English?」

「そうだよ。
っていうか、ずっと英語喋ってたんだけど気づかなかった?
ほら、一番通じやすいじゃない。
スペイン語やフランス語、はたまたエスペラント語でも良かったんだけど、一番簡単だしさ。日本語なんて覚える気にすらなれはしない。
それに比べると××は君のためにいつだって一生懸命だよね。
イタリア人として生まれればイタリア語を勉強するし。今は日本語だろう?
それに、グラン・プラスに君を連れて行こうと必死にフランス語まで勉強してたじゃないか」

「いつ?」

「いつだってだよ。
あんなに君の傍に居るときだって必死に本を読んでいたのに、気づかなかった?」
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