魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
朝特有の心地よい気だるさにまどろみながら、その白い首筋になんとはなく目をやった。

……えっと!?

私の穏やかな思考はそこで唐突にフリーズする。
下から見上げた形になった彼の右首の少し後ろ側に、引っかかれた痕が紅く残っていたのだ。

え、何でって?
多分、私の爪で。

うーん……。
なんか、とてつもない何かを、私、忘れてないかしら。



って!

そのままキョウのパジャマの黒い襟元に目をやりながら、私はようやく我に返った。

だいたい、寒いはずよね、私。いつものパジャマ着て無いもん。

絶対に購入した覚えも無いのに、私が身につけているこの赤いベビードールは一体何かなぁ……?

朝特有の気だるさでもなんでもなくて。
コイツのせいでだるいんだ。

残念ながらいつ引っかいたのかは全く思い出せないけど。

私の視線がだんだんキツくなるのに気づいたキョウの、瞳の色が黒に戻っていく。

一瞬感じた切なさは即座に胸に閉じ込めた。

「ベッドまで連れてきてあげた俺に、お礼は?」

低い声が、からかうように甘く響く。

「ベッドまで一人で来れなかった私に、お詫びは?」

そんな言葉にうっかり乗せられるわけにはいかない。
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