「庭の千草」狂詩曲
出かける時は、パルスオキシメーターと酸素ボンベの代用で酸素のスプレー缶を必ずバッグに入れている。

詩月は声変わりし損ねた掠れ気味の声だ。

入院するたび呼吸困難治療のため、気管切開(喉仏の下の気管に直接穴を開ける手術)を繰り返していたためだ。

「無口だとも聞いていた。でも存外、饒舌?」

「どうかな。イメージばかりが先行しているのかも」

「君が入院してから、院内の空気がソワソワと落ち着かない。とくに、女性たちが患者も職員も」

時任の首に下げたスマートフォンが、数十秒バイブしている。

「あっと……待たせると厄介な患者さんから」

時任はスマートフォンを開いて確認すると、苦笑いした。

誰のことを言っているのか、詩月には心当たりがあった。

入院した日。

ナースステーション前の病室で、大声で喚いていた男性患者だ。

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