「庭の千草」狂詩曲
詩月は両手に余るほどの薬に、毎回うんざりする。

「強心剤と抗不整脈薬は変更になっているから。それから、めまいや立ちくらみがした時は報告すること」

「わかった」

「今日はペースメーカーの点検と調整が入っているから、ピアノはダメだよ」

「了解」

「実は君が演奏しているのを撮影している患者がいるという噂があるから、演奏する時はじゅうぶん注意して」

詩月は別に今さら隠す必要はないのにと思った。

数日前までなら、撮影されるのは勘弁してほしいと思っていた。

でも詩月は今、胸を張って演奏したい思いの方が強かった。

時任にはいちいち話すのが面倒で「わかった」と返事をしておいた。

「君の動画が人気なのは知っているけれど、帰国してからは過去動画しか伸びてないとか。ホールの何ヵ月も調律していないピアノでも、動画が出るとバズるのか?」

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