「庭の千草」狂詩曲
宗月がもし「自分の子ではない」と拒絶していたら。

生まれてすらいなかった。

祖父、亮月が「サッサッと連れて来い、渡航できなくなるぞ」と言わなければ。

帰国できなかったかもしれない。

生まれた直後、検査も手術もできていたかどうかわからない。

詩月は1つ1つを考えると、体の震えが止まらなかった。

「『詩月』の動画がバズっているよ」

翌日の朝食後。

時任が病室に入ってくるなり言った。

「タイトルに『大学のエントランスホールにて詩月発見』とあるけれど、覚えは?」

「ーー撮られているとは思わなかった。理久以外は誰も居なかったし」

「壁に耳あり、障子に目あり。知らないのかな」

「ーーホールの階段上からの撮影だろうな。ピアノから死角になる部分か幾つかある」

「ずいぶん冷静なんだな」

「投稿されたモノがバズっているなら、元を削除しても拡散されていて消えないからね」
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