「庭の千草」狂詩曲
ーーショパンは好んで弾かない

「暑いね。こんなに暑かったかな」

ヒリヒリする暑さは、ウィーンより気温も高く湿気が多い分、断然暑い。

詩月はペットボトルの蓋を捻り、口をつけたが唇を湿らせただけで、蓋を閉じた。

水分制限と塩分制限は1日で摂取できる量が、厳しく管理されている。

詩月は干上がりそうな暑さだと思い、ベンチから立ち上がった途端、ふらついた。

「詩月!」

時任が詩月を素早く支えたが、詩月は脱力し立ち上がれず、膝をついた。

時任の声で、花海棠の木を隔ててベンチで会話していた患者や近くに居た患者が、詩月たちの周りを取り囲んだ。

「君は立ち上がれないほど気分が悪くなるまで何故」

「処置と連絡が先」

時任が詩月を(なじ)るのを、患者が止めた。

「詩月、ゴメン」

時任は言いながらペットボトルの水を一気に、詩月の頭からかけた。
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