「庭の千草」狂詩曲
理久は詩月が普段から、食事制限や水分制限を平然と当たり前にしているため、つい制限していることを忘れてしまう。

詩月は紅茶を半分飲んで、学生のピアノ演奏が終わったのを確認し、テーブルに寄りかかって席を立った。

持参したヴァイオリンケースからヴァイオリンを取り出し、ゆっくりとリリィの写真が置かれた席の前に進んだ。

マスターはカウンター内から詩月の歩く様子を見つめ首を傾げ、声をかけられなかった。

詩月が左足を庇い少し引き摺っているのに気づいて、理久の方をチラと見た。

マスターは理久が8月初めに貢と店にきた時、マスターにこっそり耳打ちしたのを思い出した。

詩月は素早く調弦を済ませると、颯爽とヴァイオリン演奏し始めた。

チャイコフスキーのヴァイオリン曲「懐かしい土地の思い出」だ。

リリィのお気に入り曲であり、リリィの十八番だった曲は、詩月がリリィから何度も聴かされた曲だ。
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