「庭の千草」狂詩曲
「ん?」

「詩月が左足を僅かに引き摺っていたこと」

「……いや、気づかなかった」

ユリウスはブランケットの端を捲り、詩月の左足を確かめた。

「あ……」

「生まれて間もなくから学校に通うまでの間、3度の心臓の手術を受けるまで、血液循環が悪かっために脳神経障害が。左足に軽い後遺症が残ったそうよ」

「全く気づかなかったな。1回り細いな」

「彩月が言っていたわ。1ヶ月の検査入院で足の筋肉が落ちていて、リハビリをしていたけれど未だ本調子ではないからと」

「詩月は俺たちに、気を遣わせないようにしていたんだな」

「どうして、そんな」

ユリウスはマルグリットの手を引き、部屋を出てダイニングテーブルに着いた。

「わたしたち、詩月と2年半余りも暮らしてきて詩月のこと、家族だと息子だと思ってきた。でも何にも知らない、大事なことは何にも知らない」
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