「庭の千草」狂詩曲

chapter 5ーー今はそこだけ

ミヒャエルは詩月が「あの人の怪我を今すぐ治してくれ」と、取り乱した日のことが忘れられない。

単なるファザコンで片付けられる程度のモノとは思えなかった。

「帰国する」と聞いた時は、もうウィーンへは戻ってこないのではと思った。

マスターは何か知っていそうなのに、訊ねても「知らない」の一点張りで何も話さなかった。

なのに、いきなりビアンカからの「詩月ぐBALに来ている」とメール。

ミヒャエルは演奏を終えるなり、速攻でBALに駆けつけた。

BALに着く頃には居ないかもしれない、何とかまだ居てほしい、そんな気持ちで駆けつけた。

客に言われなければ姿を確認した時、飛びつきたい気持ちだった。

ミヒャエルは、また腕を上げたーーと、一瞬思ったが、何かしっくりしなかった。

詩月が今まで、BALで本気の演奏したことはあったかを考えると疑問だった。
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