「庭の千草」狂詩曲
煙草の匂いが髪にも服にも染みついていた。

「……何度か入院もして、通院しながら……半年前からは酸素吸入器を持ち歩いているの」

「君は何処から、肺がんだと云う情報を?」

「指の治療で病院に行った時、看護師たちが噂していたわ。凄いヴァイオリンを弾いていたって……先生のことだわ」

「教授に直接、確かめたわけではないんだろう」

「確かめなくてもわかるわ。ずっと先生を看てきたんですもの。処方された薬の種類も調べたわ」

「君の言っていることは、君の憶測だ」

「違うわ……先週に私、先生が学長と話しているのを聞いたの。……先生はもう、覚悟を決めていらっしゃるの」

クレアの瞳からつうっと、頬に涙が伝った。

嗚咽するクレアの肩が震えていた。

「先生に私の、『シレーナ』」の音色を聴いてほしいの。先生が元気なうちに、ヴァイオリニストになって先生の希望を叶えたいの」



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