「庭の千草」狂詩曲
迷ったすえに、言うべきだと判断した。

「『シレーナ』はギリシャ語で『セイレーン』ドイツ語で『ローレライ』君のヴァイオリンを表す名前だからだ」

本当はクレアに言いたくない。

楽器のせいにはしたくない。

でも、ガダニーニが疎まれているのは疑いようがない事実だ。

断られる、それが証拠で現実だ。

「君の演奏が、審査員がぐうの音も出せない演奏でなければ」

俺は口に出して言ってみて、無茶な条件だと思った。

「……優勝できない。そういうことだ」

クレアは唇をグッと噛みしめた。

「君の望みは」

クレアの口から、はっきりとした願いを聞きたかった。

クレアの覚悟を聞きたかった。

「宗月、ピアノ伴奏をお願いできるかしら。勝ちたいの。どうしても勝ちたい」

クレアは搾りだすように言った。

「いいえ、何がなんでも、勝ってみせるわ」

クレアの瞳に迷いはないと思った。

「わかった」

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