「庭の千草」狂詩曲
「そうか。嘔吐が続くようなら医者に……」

「先生は『コンクールまで数日だ。自分のことは自分で何とかする』と」

「ったく、意地っ張りめ」

宗月は語気を強めたが、その目は穏やかだった。

「クレア、演奏している顔が恐いぜ。もっとニッコリして演奏したらどうだ」

BALで演奏している時、客が時々わたしに言った。

ニッコリ笑って? 無理難題を言う。

中級以上、上級未満の難曲を痛む指で弾いているのに、ニッコリして演奏などできる余裕はない、と思った。

「クレア。完璧の演奏ではなく、大切な人に伝える演奏をしよう」

宗月が客の言葉を受け、ピアノ伴奏する手を止めて言う。

「オールテクニック、ノーミュージックを目指しているのではないんだ。審査員も聴衆だ。音楽は心だよ」

「えっ!? 審査員も何ですって」

問い返した。

「審査員も聴衆だよ。曲を捩じ伏せて弾くのは音楽とは言わない」
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