嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-

第19話 嘘つきな騎士 - 前編 -

 用意された客間は、令嬢時代にあてがわれた部屋とは豪華さが(けた)違いだった。何度も泊った王城で、夫婦部屋に通されたことに気恥ずかしさを覚えてしまう。

(公爵家の人間ともなると、扱いもVIP待遇だわ)

 新年を祝う夜会への招待とともに、前乗りで王城に滞在するお誘いを受けた。このまま数日連泊して、アンネマリーと双子の王子にも会わせてもらえることになっている。

「明日の舞踏会もたのしみですけれど、王子殿下にお会いできるかと思うと、わたくし今からうれしくって」
「そうか」

 言いながら、ゴージャスな天蓋付きの寝台へと運ばれる。ヘッドボードに寄り掛かったジークヴァルトの膝の上、横抱きの状態でリーゼロッテは身を預けた。
 まだ早い時間だが、あとは眠るだけの状態だ。ふたりきりでゆったり過ごすのは、神事の旅以来のことだった。

(それにしても、気兼ねなく甘えられるってなんだかいいわね)

 普段、寝室でちょっとでもすり寄ろうものなら、あれよあれよという間に身ぐるみ剥がされ、会話する暇もなく夫婦の営みに縺れ込んでしまう。まぐあい禁止令が出ている最中は、ジークヴァルトは遅くまで執務をこなしている。戻ってくるのは深夜に近いため、そんな日は先に寝てしまうことがほとんどだ。
 心置きなく甘えられる時間を堪能しようと、ここぞとばかりに広い胸に頬ずりをする。この客間は青龍の加護が厚い部屋なので、異形を騒がせてしまう心配もなかった。プチ旅行気分も相まって、いつもよりちょっぴり積極的なリーゼロッテだ。

「今夜はやけにうれしそうだな」
「だってこんなふうにヴァルト様といられるのって、滅多にございませんでしょう?」
「滅多に? 夜はいつもふたりでいるだろう?」
「そうではなくて、人目を気にせずゆっくりお話しができる時間ということですわ」
「話などいつでも好きなだけすればいい」

 こめかみを(ついば)んでくるジークヴァルトを見上げ、リーゼロッテは唇を尖らせた。

「わたくしに話をする余裕など、ヴァルト様は毎晩与えてくださらないではないですか」
「ずっと口を塞いでるわけでもない。話したければ話せばいい」
「そんなこと無理に決まってますわ」
「なぜだ?」
「なぜって、それはヴァルト様が……」

 それ以上は言えなくて、赤くなって口ごもる。途端にジークヴァルトが悪い顔をした。この魔王の笑みが降臨すると、最近はろくなことが待っていない。

「ひゃっ」

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