嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
第20話 嘘つきな騎士 - 後編 -
出た廊下には、誰でも使っていい休憩用の部屋がいくつも並んでいた。
この休憩室は酔い潰れた者が宿泊したり、男女の一夜の逢瀬など、好きに使っていいことになっている。扉が閉まっている部屋は使用中のサインだ。夜会はまだ始まったばかりなので、ほとんどが空き部屋状態だった。
会場の喧騒が遠くに響く中、カイの気配を探して奥へと進む。結局使われている部屋は一つもなくて、突き当りまでくるとルチアはほっと胸をなでおろした。
(カイはあの女とふたりで、部屋に籠ったりはしなかったんだ)
胸のつかえが少しだけ取れて、会場に戻ろうとルチアは来た廊下を振り返った。
「おいお前、こんな場所で男漁りか?」
「きゃっ」
いきなり手首を掴まれる。驚いて見上げると、先ほどじろじろとルチアを見ていた酔っぱらいの紳士だった。
「あの、離してください」
「世間知らずの令嬢なのか? まぁいい、生娘だとしてもわたしがひとつ手ほどきしてやろう」
「ちょっとやめて!」
こういった場所には絶対ひとりで近づかないようにと、マナー教師に口うるさく言われていた。しまったと思っても、時すでに遅しのことだった。
抵抗もむなしく近場の部屋に連れ込まれてしまう。大きな音を立てて鍵を閉めた男は、乱暴にルチアを寝台へと突き飛ばした。
「何するのよ!」
「うるさい! いいから大人しく言うことを聞け!」
酔いが回った目で男はまじまじとルチアを見下ろしてくる。値踏みをするような視線に、ルチアの肌が全身粟立った。
「お前ブルーメ子爵家の……。そうか、王家繋がりか。愛人にすればわたしもいい思いができる」
「何勝手なこと言ってるのよ。それ以上近づいたら、わたし大声で助けを呼ぶわ」
「いいだろう。そのときはわたしがきちんと責任を取ってやる」
下卑た嗤いを向けられて、芯から心が冷えてくる。この状況を誰かに見られてしまったら、こんな男と一生添い遂げる破目に陥ってしまうのだ。ぞっとしてルチアは唇をわななかせた。
この休憩室は酔い潰れた者が宿泊したり、男女の一夜の逢瀬など、好きに使っていいことになっている。扉が閉まっている部屋は使用中のサインだ。夜会はまだ始まったばかりなので、ほとんどが空き部屋状態だった。
会場の喧騒が遠くに響く中、カイの気配を探して奥へと進む。結局使われている部屋は一つもなくて、突き当りまでくるとルチアはほっと胸をなでおろした。
(カイはあの女とふたりで、部屋に籠ったりはしなかったんだ)
胸のつかえが少しだけ取れて、会場に戻ろうとルチアは来た廊下を振り返った。
「おいお前、こんな場所で男漁りか?」
「きゃっ」
いきなり手首を掴まれる。驚いて見上げると、先ほどじろじろとルチアを見ていた酔っぱらいの紳士だった。
「あの、離してください」
「世間知らずの令嬢なのか? まぁいい、生娘だとしてもわたしがひとつ手ほどきしてやろう」
「ちょっとやめて!」
こういった場所には絶対ひとりで近づかないようにと、マナー教師に口うるさく言われていた。しまったと思っても、時すでに遅しのことだった。
抵抗もむなしく近場の部屋に連れ込まれてしまう。大きな音を立てて鍵を閉めた男は、乱暴にルチアを寝台へと突き飛ばした。
「何するのよ!」
「うるさい! いいから大人しく言うことを聞け!」
酔いが回った目で男はまじまじとルチアを見下ろしてくる。値踏みをするような視線に、ルチアの肌が全身粟立った。
「お前ブルーメ子爵家の……。そうか、王家繋がりか。愛人にすればわたしもいい思いができる」
「何勝手なこと言ってるのよ。それ以上近づいたら、わたし大声で助けを呼ぶわ」
「いいだろう。そのときはわたしがきちんと責任を取ってやる」
下卑た嗤いを向けられて、芯から心が冷えてくる。この状況を誰かに見られてしまったら、こんな男と一生添い遂げる破目に陥ってしまうのだ。ぞっとしてルチアは唇をわななかせた。