嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「安心しろ。初めてでもよくなれる薬がある」

 男が(ふところ)から取り出したのは、ピンクの可愛らしい小瓶だった。香水でも入っていそうなそれを目の前に掲げられ、ルチアの顔が青ざめる。

「それは……」
「なぁに、ただの甘い水だ。さぁ一滴残さず飲み干すといい」

 顎を掴まれて、無理やり口に含ませようとして来た。やけに甘ったるい香りが鼻をつく。この中身は媚薬のはずだ。淑女教育の一環で、悪い男に騙されて飲まされないよう、ルチアはマナー教師から教えられていた。

「こんなもの、誰が飲むものですか!」
「ぐぇっ」

 男を勢いよく突き飛ばし、扉目がけて走りだす。かさばるドレスの(すそ)を掴まれ、ルチアは半ばの床で膝をついた。

「生意気な真似を。このわたしに逆らうなど愚かな娘だ」

 二の腕をつかまれて乱暴に立たされた。目が据わった状態で、男は酒臭い息を吐きかけてくる。

「痛い目に遭いたくなかったら、今すぐ自分で飲むことだ」
「やめてっ」

 瓶の口を押し付けられて、恐怖のあまりルチアはぎゅっと(まぶた)を閉じた。

「そこまでにしていただきましょうか? 同意のない行為は犯罪ですよ」
「……カイ」

 放心状態のまま、その名をつぶやいた。開いた扉から入ってきたのは、やけに冷めた瞳をした騎士服姿のカイだった。

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