嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-

第21話 双子の王子

 新しい年を知らせる(かね)が王城の高い塔から鳴らされる。朝もやのかかる箱庭にひとり(たたず)み、マルコはその音を聞いていた。
 澄み渡る空に響く振動は、神殿にいたときよりも力強く身を震わせる。ここは後宮にある東屋(あずまや)だ。鐘の音が近く聞こえるのは当然のことだろう。

(もうすぐ一年だ)

 第一王女が死んだとき、マルコは(とりで)の騎士団に拘束された。身に覚えのない罪を着せられそうになり、しばらくしてから始まったのがこの軟禁生活だ。
 ここ数か月は夢見の力を持っているからと、男の自分が巫女役なんかをさせられている。神事の時以外はずっとこの狭い空間に閉じ込められたまま、誰とも会話することなく日々は過ぎていく。

 今や日課となっているため息が、頬に白く纏わりついた。ぶるりと寒さに震えながらも、マルコはいつものように雪積もる庭を散策し始めた。
 と言っても高い塀に囲まれた小さな庭だ。あっという間にひと回りすると、小鳥たちのさえずりを吸い込むようにマルコは何度か大きく深呼吸した。

 ぴちゅちゅちゅちゅ、と茂みの一角がやけにそこだけ賑やかだ。鳥の巣でもあるのかと木々の間を覗き込む。薄暗い奥に目を凝らすと、鬱蒼(うっそう)とした枝の合間に()びついたアーチのトンネルがあるのに気がついた。

(こんなところに小路があったんだ……)

 手入れのされていない庭木のせいで、今まで見落としていたようだ。生い茂る雪の枝をかき分けて、マルコはトンネルをくぐっていった。

「わぁ……!」

 絡みつく枝葉の道を切り開くと、そこにも庭が広がっていた。新しい景色に心が躍る。屋根付きのガゼボがあって、奥には小さな丸太小屋が見えた。
 鍵がかかってないのをいいことに、興味津々で扉を開く。埃っぽい部屋はあまり嗅いだことのないにおいがした。薄暗い中に目が慣れてくると、大小さまざまな絵画が置かれているのが目に入った。

 飾るでもなく、それらは雑然と下に置かれている。テーブルの上には何本もの筆や絵の具、(いろ)の乗ったパレットなどが所狭しと並べられていた。
 においの正体は絵の具なのだろう。使いかけのチューブをひとつ手に取ると、かちかちに固まった状態だった。

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