嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「リシルの定めを、回避したくば……?」
「あなたが知りたかった言葉でしょう? 続きはこうよ。時が満ち、ラスと出会った(あかつき)に、オーンの定めと成り替わり、リシルは新たな道を行くであろう」
「リシルは新たな道に……」
「そうよ」
「オレと出会ったことで、ルチアの定めは成り変わった……?」

 リシルからオーンへ。それは異形の者に(あや)められる宿命から、カイと対をなす星に堕とす者となったという事だ。

(――ルチアは死から(まぬが)れる。オレが星に堕ちたとしても)

 あの日のルチアが目に浮かんだ。
 まだ幼さの残る顔。燃えさかるような深紅の髪。柔らかな唇に、(すべ)らかな熱い肌。
 怒りに満ちた金の瞳が、まっすぐにカイを睨みつけてくる。

(あの瞳が、永遠にオレのものになる――)
 カイがいなくなったその後の世界でも。

 突き放せば突き放すほど、ルチアの視線はこちらに向けられた。それでもまだもの足りなくて、冷たい態度を幾度もとった。

 カイを意識し、カイに執着し、もっともっと深く溺れていくように――

「そこでそんなふうに笑うのね」

 苦々しく漏らしたあと、だけれど、とその唇は裏腹に小さく弧を描いた。

「それも、あなたらしいわ」

 クリスティーナは涼やかに笑う。

「最後まで、あなたはあなたのままいきなさい。カイ・ラス・デルプフェルト」
「仰せのままに」

 誰かに言われずともそうするつもりだった。だがカイは素直に礼を取る。

 クリスティーナを乗せた馬車は、静かに街道を走り出した。
 その影が消えゆくまで、カイはしばらくその場に(たたず)んでいた。







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