嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「本当に助かりました。なかなか抜け出せず途方に暮れていたものですから。何とお礼を申し上げればよいものか」
「いえ、お気になさらず。ではわたしはこれで……」
「あら、あなた」

 ふいに馬車の扉が開かれた。中からマントのフードを深くかぶった女性が現れる。

(この声は――いや、しかしそんな馬鹿な)

 彼女は一年前に亡くなったはずだ。荼毘(だび)に付される瞬間を、あの日カイ自身も見送った。

「……そう、あなたたちはもう出会ってしまったのね」

 伏せられた瞳はフードの陰に隠れてよくは見ることができない。だがカイは知っている。この涼やかな笑い声をあげる人物を。

「まったく、青龍はまだまだわたくしを使い走りにするようね」
「クリスティーナ様……なぜあなたが」
「その名は口にしないでちょうだい。王女はもう、この世のどこにもいないのだから」

 そっと自身の唇に指を当て、クリスティーナは再び鈴を転がすように笑った。いつも輝きを返していたハンドチェーンの飾りは、もうその手にはめられていない。

「そう……あの言葉を伝えろと言うのね?」
「あの言葉?」

 虚空(こくう)を見つめたクリスティーナに、つられるようにカイもその辺りを見た。しかし目に映るのは寒々とした鈍色(にびいろ)の空だけだ。

「リシルの定めを回避したくば、ラスの対となるオーンの宿命を行け」

 はっとしてクリスティーナに視線を戻す。

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