嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
第27話 夜のしじま
「ロミルダもわたくしたちと一緒に辺境の砦に戻るの?」
「もちろんでございます」
「でもエラが……」
エラが臨月に入ったこともあり、少し前から元侍女長のロミルダが穴埋めのため遥々ヴォルンアルバから応援に来ていた。
そのエラが先日無事に男の子を出産し、マテアスの母親である彼女は孫の世話も大喜びで買って出ている。そんな矢先にリーゼロッテがヴォルンアルバに行くことになった。もちろんエラは留守番だ。
(今侍女長の代役を務めるロミルダがいなくなったら、エラの気苦労が増えやしないかしら)
産休をもらっていることに、それでなくともエラは罪悪感を抱いているようだ。どうしたものかとリーゼロッテは不安げに小首をかしげた。
「大奥様の誕生日のお祝いを控えておりますからね。長年ディートリンデ様の侍女を務めてきたわたしが戻らないことには参りません」
「そう……そうよね」
こんなふうに返されては、公爵家に留まってくれとは言い出しづらい。しゅんと俯くリーゼロッテを前に、ロミルダは恰幅のいい体を自信ありげに反らしてみせた。
「なぁに、心配はいりませんよ。フーゲンベルク家は古くからいる者ばかりです。マテアスもついておりますし、侍女長のエラがしばらく休んだところで何も問題はありません」
「でもわたくし赤ちゃんのお世話が心配で。エラもロミルダがいた方が心強いんじゃないかしら」
「侍女たちは子育てに慣れておりますから。わたしがいなくとも、みなエラの良い手本になってくれることでしょう」
フーゲンベルク公爵家では広大な敷地内に使用人専用の居住区を設けている。そこを終の住処とし、親子代々で仕える者がほとんどだ。
私生活においても、使用人たちは持ちつ持たれつ協力し合うのが当たり前となっていた。子育てもその一環で、公爵家で生まれた子供はみなで育てるという認識だった。
それにエラの助けになりたいと手を上げる者はあとを絶たない。ロミルダの言うように、リーゼロッテの心配は杞憂に終わることだろう。
「旅路の準備はわたしが取り仕切ります。リーゼロッテ様は安心して旦那様とのご旅行を満喫なさってください」
「そうね。わたくしが気兼ねしていては、余計エラの負担になってしまうものね」
納得して頷いた。むしろ自分がいない方が、エラも育児に専念できるに違いない。産気づく直前まで、リーゼロッテの身の回りの世話をすると言って聞かなかったエラだった。
「もちろんでございます」
「でもエラが……」
エラが臨月に入ったこともあり、少し前から元侍女長のロミルダが穴埋めのため遥々ヴォルンアルバから応援に来ていた。
そのエラが先日無事に男の子を出産し、マテアスの母親である彼女は孫の世話も大喜びで買って出ている。そんな矢先にリーゼロッテがヴォルンアルバに行くことになった。もちろんエラは留守番だ。
(今侍女長の代役を務めるロミルダがいなくなったら、エラの気苦労が増えやしないかしら)
産休をもらっていることに、それでなくともエラは罪悪感を抱いているようだ。どうしたものかとリーゼロッテは不安げに小首をかしげた。
「大奥様の誕生日のお祝いを控えておりますからね。長年ディートリンデ様の侍女を務めてきたわたしが戻らないことには参りません」
「そう……そうよね」
こんなふうに返されては、公爵家に留まってくれとは言い出しづらい。しゅんと俯くリーゼロッテを前に、ロミルダは恰幅のいい体を自信ありげに反らしてみせた。
「なぁに、心配はいりませんよ。フーゲンベルク家は古くからいる者ばかりです。マテアスもついておりますし、侍女長のエラがしばらく休んだところで何も問題はありません」
「でもわたくし赤ちゃんのお世話が心配で。エラもロミルダがいた方が心強いんじゃないかしら」
「侍女たちは子育てに慣れておりますから。わたしがいなくとも、みなエラの良い手本になってくれることでしょう」
フーゲンベルク公爵家では広大な敷地内に使用人専用の居住区を設けている。そこを終の住処とし、親子代々で仕える者がほとんどだ。
私生活においても、使用人たちは持ちつ持たれつ協力し合うのが当たり前となっていた。子育てもその一環で、公爵家で生まれた子供はみなで育てるという認識だった。
それにエラの助けになりたいと手を上げる者はあとを絶たない。ロミルダの言うように、リーゼロッテの心配は杞憂に終わることだろう。
「旅路の準備はわたしが取り仕切ります。リーゼロッテ様は安心して旦那様とのご旅行を満喫なさってください」
「そうね。わたくしが気兼ねしていては、余計エラの負担になってしまうものね」
納得して頷いた。むしろ自分がいない方が、エラも育児に専念できるに違いない。産気づく直前まで、リーゼロッテの身の回りの世話をすると言って聞かなかったエラだった。