嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「出立までまだ間がありますし、それまでは孫の世話はしっかりやらせてもらいます。次はいつ顔が見れるかも分かりませんからね」
「エッカルトも会いたがっているんじゃないかしら?」
「それはもう。わたしの自慢話を聞いたら、きっと悔しがることでしょう」

 エッカルトとロミルダの初孫は、子爵家に嫁いだエマニュエルが生んだランドルフだ。だがランドルフはブシュケッター家の跡取りのため、孫として接することは叶わない。
 例え血のつながりがあろうとも、貴族社会では身分の壁を越えることは許されなかった。そういった意味では、マテアスとエラの間にできた子がふたりの初孫と言えるのかもしれない。

「もう少し落ち着いたら画家を呼んではどうかしら? せめて絵姿だけでもエッカルトに届けてあげたいわ」
「ですが画家に頼むとなるとそれなりの費用が掛かりますし……」
「お祝いごとだもの、それくらいはさせてちょうだい。何なら毎年描いてもらおうかしら。そうしたら離れていても可愛い孫の成長を見守れるでしょう?」
「エッカルトもよろこぶと思いますが……エリアスはマテアスの赤ん坊のころにそっくりですからねぇ。毎年肖像画を残すのは、少々やり過ぎかと」

 生まれた子はエリアスと名付けられた。マテアスに似た糸目の男の子で、うっすら生えてきた髪はエラと同じ茶色がかった赤毛のようだ。

(ハの字の困り眉もマテアスそっくりなのよね。髪の毛が伸びてきたら、やっぱり天然パーマになるのかしら)

 エラの髪色をした小さなマテアスを想像して、リーゼロッテはふふと笑みをこぼした。
 ジークヴァルトと自分の子供はどんな子になるのだろう。ふとそんなことを考える。

(これから授かる託宣の子は女の子って話だけれど……ヴァルト様に似た青い瞳だといいな)

 あれこれと妄想が膨らんで、口元がゆるむリーゼロッテだ。

「そうそう、お伝えするのを忘れるところでした。リーゼロッテ様、明日にでもルチア・ブルーメ子爵令嬢様が公爵家にお越しになられるそうです」
「まぁ、ルチア様が? 会えるのはうれしいけれど、この雪の中をどうしてわざわざ……?」

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