嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
第28話 砦の輪舞曲 - 前編 -
長旅の馬車から降り立って、リーゼロッテは堅牢な石造りの城を見上げた。
辺境の砦へ来たのはこれで二度目、シネヴァの森の神事から帰る途中に立ち寄って以来のことだ。前回はいきなりの義実家訪問だったため、緊張しまくりだった記憶しかない。
(今となっては笑い話だけど……)
ジークヴァルトとの婚姻でいっぱいいっぱいになっていたこともあり、あのときは随分と締まらない挨拶になってしまった。
何しろ結婚報告で義両親に会いに来たことを、ジークヴァルトはギリギリ直前に伝えてきたのだ。そのことを未だ根に持っているリーゼロッテだった。
(公爵夫人になってからあとちょっとで一年だもの。少しは落ち着いたところを見せなくちゃ)
名誉挽回のチャンスとばかりに意気込んでいると、すかさずジークヴァルトに抱き上げられる。
「疲れただろう。オレが運ぶ」
「ヴァルト様!」
抗議の声を上げるも、ジークヴァルトはさっさと歩きだしていた。
「疲れてなどおりません。今すぐ降ろしてくださいませ」
「ここは思った以上に敷地が広い。いいから黙ってオレに抱かれていろ」
(だから、言い方ぁ……!)
ジークヴァルトの母親ディートリンデは、怒らせると怖い人だと複数の証言が取れている。何と言ってもその正体は、マナー教師のロッテンマイヤーさんだ。
(あのスパルタ授業、今でも時々夢に見たりするのよね……)
そのシーンを想像するだけで、条件反射で背筋が伸びる。今あるリーゼロッテの淑女ぶりは、彼女の厳しい指導の賜物だ。
大きな吹き抜けの広間に出て、ジークヴァルトの歩みが止まる。一向に降ろしてくれる気配がなくて、リーゼロッテは必死に身をよじった。
「いい加減降ろしてくださいませ。こんな格好のままでご挨拶などできませんわ」
「問題ない。ここではむしろこれがしきたりだ」
「しきたりだなんてそんな……」
嘘を言うなと脳内で突っ込みを入れたとき、カツカツと靴音が近づいてきた。あの颯爽とした歩き方は、ジークヴァルトの父親であるジークフリートだ。
辺境の砦へ来たのはこれで二度目、シネヴァの森の神事から帰る途中に立ち寄って以来のことだ。前回はいきなりの義実家訪問だったため、緊張しまくりだった記憶しかない。
(今となっては笑い話だけど……)
ジークヴァルトとの婚姻でいっぱいいっぱいになっていたこともあり、あのときは随分と締まらない挨拶になってしまった。
何しろ結婚報告で義両親に会いに来たことを、ジークヴァルトはギリギリ直前に伝えてきたのだ。そのことを未だ根に持っているリーゼロッテだった。
(公爵夫人になってからあとちょっとで一年だもの。少しは落ち着いたところを見せなくちゃ)
名誉挽回のチャンスとばかりに意気込んでいると、すかさずジークヴァルトに抱き上げられる。
「疲れただろう。オレが運ぶ」
「ヴァルト様!」
抗議の声を上げるも、ジークヴァルトはさっさと歩きだしていた。
「疲れてなどおりません。今すぐ降ろしてくださいませ」
「ここは思った以上に敷地が広い。いいから黙ってオレに抱かれていろ」
(だから、言い方ぁ……!)
ジークヴァルトの母親ディートリンデは、怒らせると怖い人だと複数の証言が取れている。何と言ってもその正体は、マナー教師のロッテンマイヤーさんだ。
(あのスパルタ授業、今でも時々夢に見たりするのよね……)
そのシーンを想像するだけで、条件反射で背筋が伸びる。今あるリーゼロッテの淑女ぶりは、彼女の厳しい指導の賜物だ。
大きな吹き抜けの広間に出て、ジークヴァルトの歩みが止まる。一向に降ろしてくれる気配がなくて、リーゼロッテは必死に身をよじった。
「いい加減降ろしてくださいませ。こんな格好のままでご挨拶などできませんわ」
「問題ない。ここではむしろこれがしきたりだ」
「しきたりだなんてそんな……」
嘘を言うなと脳内で突っ込みを入れたとき、カツカツと靴音が近づいてきた。あの颯爽とした歩き方は、ジークヴァルトの父親であるジークフリートだ。