嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「はーっはっはっはっは、よく来たなジークヴァルト、リーゼロッテ!」
「ジークフリート様、ご無沙汰しております」
反射的に挨拶したものの、思わず我が目を疑った。
現れたジークフリートは腕に妻を抱え上げている。ディートリンデはまるで自分が鏡に映ったかのような体勢だ。
そんな彼女と視線を合わせたリーゼロッテは、固まりかけた脳みそでどうにかこうにか無難な言葉を絞り出した。
「ディートリンデ様……今回は舞踏会にお招きいただきありがとうございます」
「ええ、遠いところをよく来てくれたわね、リーゼロッテ……」
普通の挨拶のようでいて、ふたりともお姫様抱っこされている状況だ。諦めの境地で見つめ合い、互いを慰めるかのように深く同時に頷き合った。
「ゆっくりと話をしたいところなのだけど、あいにく舞踏会が終わるまでは時間が取れそうにないのよ」
出席者は遠方から招かれる者がほとんどだ。開催の数日前にやって来て、しばらく滞在するスタイルとなっている。舞踏会の準備もあるし、迎える側が忙しいのはもっともだろう。
「わたくしたちのことでしたらお気遣いはいりませんわ」
「そう言ってもらえると助かるわ。悪いけど、ヴァルトもお願いね」
「はい、問題ありません」
「ヴァルトたちもいずれここに住むことになるからな。自分の家だと思って寛ぐといい」
ジークヴァルトが公爵の地位から退くとき、次は辺境伯を受け継ぐことになる。フーゲンベルク家の当主は代々こうして世代交代を繰り返してきた。
とは言えジークヴァルトとの間には跡を継ぐ子供すらできていない。リーゼロッテにとってはまだまだ遠い話のことだ。
ふと広間の向こうから耳にざわめきが届いた。反響してよくは聞こえないが、少なくない人数のように感じられる。
(もしかしてルチア様一行かしら?)
しかしルチアは自分たちより数日遅れで出発している。さすがに先に着いたということはないはずだ。
(みんなより早めに来るよう言われてたのに……)
一番乗りだと思っていたリーゼロッテは、声の聞こえる方を見てこてんと首を傾けた。
「わたくしたちのほかに、もう来られている方がいらっしゃるのですか?」
「招待客はまだね。明日以降にも続々と到着すると思うけれど」
「招待客『は』?」
ディートリンデの言葉尻を捉えて、ジークヴァルトが僅かに眉根を寄せた。
「と言うと、母上。それとは別に客人が?」
「それは……」
「王が騎士団をよこしてな。今その対応にも追われているところだ」
「騎士団? 王城からですか?」
「ああ、大公閣下自らお出ましだ。まぁ、詳しいことは後で話そう。ふたりとも長旅で疲れているだろう? 今日のところはゆっくり休んでくれ」
切り替えるようにジークフリートは明るい声を出した。そんな夫を見て、ディートリンデも別の話題を投げかける。
「ジークフリート様、ご無沙汰しております」
反射的に挨拶したものの、思わず我が目を疑った。
現れたジークフリートは腕に妻を抱え上げている。ディートリンデはまるで自分が鏡に映ったかのような体勢だ。
そんな彼女と視線を合わせたリーゼロッテは、固まりかけた脳みそでどうにかこうにか無難な言葉を絞り出した。
「ディートリンデ様……今回は舞踏会にお招きいただきありがとうございます」
「ええ、遠いところをよく来てくれたわね、リーゼロッテ……」
普通の挨拶のようでいて、ふたりともお姫様抱っこされている状況だ。諦めの境地で見つめ合い、互いを慰めるかのように深く同時に頷き合った。
「ゆっくりと話をしたいところなのだけど、あいにく舞踏会が終わるまでは時間が取れそうにないのよ」
出席者は遠方から招かれる者がほとんどだ。開催の数日前にやって来て、しばらく滞在するスタイルとなっている。舞踏会の準備もあるし、迎える側が忙しいのはもっともだろう。
「わたくしたちのことでしたらお気遣いはいりませんわ」
「そう言ってもらえると助かるわ。悪いけど、ヴァルトもお願いね」
「はい、問題ありません」
「ヴァルトたちもいずれここに住むことになるからな。自分の家だと思って寛ぐといい」
ジークヴァルトが公爵の地位から退くとき、次は辺境伯を受け継ぐことになる。フーゲンベルク家の当主は代々こうして世代交代を繰り返してきた。
とは言えジークヴァルトとの間には跡を継ぐ子供すらできていない。リーゼロッテにとってはまだまだ遠い話のことだ。
ふと広間の向こうから耳にざわめきが届いた。反響してよくは聞こえないが、少なくない人数のように感じられる。
(もしかしてルチア様一行かしら?)
しかしルチアは自分たちより数日遅れで出発している。さすがに先に着いたということはないはずだ。
(みんなより早めに来るよう言われてたのに……)
一番乗りだと思っていたリーゼロッテは、声の聞こえる方を見てこてんと首を傾けた。
「わたくしたちのほかに、もう来られている方がいらっしゃるのですか?」
「招待客はまだね。明日以降にも続々と到着すると思うけれど」
「招待客『は』?」
ディートリンデの言葉尻を捉えて、ジークヴァルトが僅かに眉根を寄せた。
「と言うと、母上。それとは別に客人が?」
「それは……」
「王が騎士団をよこしてな。今その対応にも追われているところだ」
「騎士団? 王城からですか?」
「ああ、大公閣下自らお出ましだ。まぁ、詳しいことは後で話そう。ふたりとも長旅で疲れているだろう? 今日のところはゆっくり休んでくれ」
切り替えるようにジークフリートは明るい声を出した。そんな夫を見て、ディートリンデも別の話題を投げかける。