嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「もう、ヴァルト様、あんな急に失礼ですわ」
「問題ない」

 会場の隅まで運ぶと、ジークヴァルトはようやくリーゼロッテを下に降ろした。
 果実水を手渡され、うやむやのまま甘い液体とともに言葉を飲み込んだ。

(ああ、あのままもっと踊ってたかったな)

 フォークダンスのようでなんだかすごく楽しかったのだ。
 日本にいたころの自由が急に思い出されて、リーゼロッテはうらやましそうにじっとダンスの輪を眺め続けた。

「リーゼロッテ」
「え……?」

 ふいに腕を引かれ、柱の陰に押し込まれる。
 エスコートには程遠い動きに驚いて、顔を上げた先でいきなりジークヴァルトに唇をふさがれた。
 ねっとりと舌が入り込んでくる。

 貴族たちの談笑がすぐ近くで聞こえるそんな距離だ。柱があると言っても、覗こうと思えば覗きこめてしまうだろう。
 こんな場所でキスをしている後ろめたさと恥ずかしさで、リーゼロッテはジークヴァルトの胸を必死にぽこぽこと叩いた。

「んん……ヴぁるとさま……誰かに見られたら……」
「まだ駄目だ」

 かえって口づけを深められ、リーゼロッテの体から次第に力が抜けていく。

 盛り上がる会場をよそに、秘密の口づけは短くない時間続けられたのだった。









< 483 / 582 >

この作品をシェア

pagetop