嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「はは、今日がオレの命日かな? ジークヴァルト様が睨んでる」

 踊りながら軽口を叩くカイは普段と変わらない。
 ルチアとのあんな場面を見せられて、リーゼロッテの方はうまく言葉を返せなかった。

「何かご不満がありそうですね?」
「いいえ、わたくしは何も……」

 ルチアはカイを忘れようとしている。そう思い直してリーゼロッテは淑女の笑みをカイに向けた。

「だったらオレからひとこといいですか?」
「ええ」
「何かあったとき、ベッティのことお願いします」
「それは……もちろんですわ」

 リーゼロッテは戸惑い気味に頷いた。少し身構えたところ、カイは全く想像してなかったことを言ってきた。
 真意を問えないまま、次のパートナーへと手を差し伸べる。
 その先にいたのはイザベラの兄、ニコラウスだった。

「ひょっ、やっべ! どうしよう妖精姫だっ」

 リーゼロッテに聞こえるほどの大声に、テンションが上がりまくっているのが伺える。
 顔はそっくりでも、ニコラウスはイザベラとまったく違う性格のようだ。
 微笑ましく思っていると、リーゼロッテを横からジークヴァルトがかっさらっていった。

「ジークヴァルト様!」
「もう終いだ」

 横抱きに抱え上げられて、踊りの輪から引き離される。
 遠ざかるニコラウスが、パートナー不在のままぽつりと独り取り残されていた。

 周囲にいた貴族たちが、物珍しげにそのやり取りを眺めやっている。これは社交界で面白おかしく噂されるに違いない。
 しばらくは笑いものの種になるのだと、リーゼロッテは若干涙目になった。

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