嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-

第30話 宵闇の急襲

「ない……ないわ」
「ルチア様ぁ? どうかなさいましたかぁ?」

 休憩がてら化粧直しに戻ってきたルチアが、必死にドレスのあちこちを探っている。

「ペンダントがないの……」
「ああ、ルチア様がいつも大事に持っているやつですねぇ。客間に置いて行かれたんじゃないですかぁ?」
「いいえ、出るときちゃんとここに入れたもの」

 青ざめたルチアが慌てて休憩室を出て行こうとする。
 ベッティはそれを制してルチアを座らせた。

「落ち着いてくださいましぃ。ルチア様が通った場所をわたしが探してきますぅ。広間で落ちてなかったか辺境伯様にも尋ねてきますのでぇ」

 変な場所にでも迷い込まれたら、酔った男に襲われかねない。
 何しろルチアには前科があった。ここで騒ぎを起こしたら、カイにも辺境伯にも迷惑がかかってしまう。

「わたしが戻るまでルチア様は絶っっっ対にここから出ないでくださいませねぇ。あの方のためにも約束してくださいますかぁ?」
「……分かったわ。大人しくここで待ってる」

 カイの存在をチラつかせておけば、ルチアもきちんとベッティの言葉に従うだろう。
 念のため近くにいた使用人に声がけをしてから、ベッティは廊下という廊下を隈なく探しに行った。

「ん? ベッティ、こんなところで何やってるの?」
「カイ坊ちゃま……」

 出くわしたカイはめずらしく誰も連れずにいた。
 こんなときはほろ酔いのご夫人と休憩室にしけこむのが大概だ。そして事後に乱れた夫人の世話をいつもやらされているベッティだった。

「実はルチア様のペンダントを探しててぇ」
「ペンダント?」
「はいぃ、亡くなった母親の形見らしくってぇ、いつも大事にお持ちになってたんですよぅ。それを失くされてすんごい取り乱しておいででしたぁ」

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