嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 意を決してその場を離れた。つられるように異形たちもリーゼロッテについて来る。振り向くと、ルカたちがいる部屋の前の異形の者は、思った通り数が激減していた。

(よかった……やっぱりこの子たちの目当てはわたしなのね)

 つかず離れず寄って来る異形は、どんどんどんどん増えてきている。しかし凶悪な異形の者はほとんどいなかった。これならば何事もなくジークヴァルトの元に辿り着けそうだ。
 弱くともこう数が多いと、異形の思念が頭の中に入り込んでくる。同調しないようにと、リーゼロッテは努めて異形たちの声を聞かないようにした。

 それでも頭の中で木霊する異形の怯えに、リーゼロッテは既視感を覚えた。いつかどこかで同じことがあった気がする。さほど考えずとも、すぐに思い当たった。
 あれはジークヴァルトに再会して間もなくの頃、初めて聖女の力を解放した日のことだ。突然騒ぎ出した異形たちに、王城中がひっくり返った騒ぎを思い出した。

「ごめんなさい……わたくしがきちんと力を扱えてたら……」

 今すぐにでも、ここにいるみんなを天に還してやれるのに。
 自分のポンコツぶりはあの頃とまったく変わらない。気合いを込めて力を解放すれば、やってやれないことはないとは思う。だがそうすると気絶するのは避けられないだろう。そんなことをしたらジークヴァルトに心労を掛けるのは目に見えていた。

(今そんなこと言ってても仕方ないわ。とにかくジークヴァルト様の元に行かなくちゃ)

 異形だらけで先が見えない廊下の奥に、ジークヴァルトの青を感じる。
 それはこちらの方にも向かってきていて、ジークヴァルトも自分を目指しているのだとリーゼロッテは心強く思った。

 そのとき周囲の異形の恐怖が膨れ上がった。つられるようにリーゼロッテの肌も総毛立つ。

(な、に――)

 肌を刺す(くれない)の瘴気は、息が詰まって喉がひりつくほどだ。

 覚えのある禍々しい異形の者の気配に、リーゼロッテは恐る恐る振り返った。








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