嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 安心させるために微笑みをつくる。
 部屋にふたりを残していくのも心配だったが、リーゼロッテと一緒にいる方が危ない目に合う可能性が高かった。そうしている間にも、ドアに下げた守り石がまたひとつ砂と化す。

「ルカ、助けが来るまでは絶対に扉を開けては駄目よ?」
「姉上はどちらへ……」
「わたくしはジークヴァルト様の元へ向かうわ」
「お姉様、今出て行ったら危ないわ! 異形だけでなく敵もいるんでしょう?」
「それが今できる最善なの。ルカはツェツィーリアを守ることだけ考えること。いいわね?」

 真剣な眼差しを向けると、硬い表情をしつつもルカは素直に頷き返してきた。

「分かりました」
「ルカ!」
「大丈夫よ、ツェツィーリア。この砦には騎士団の方も大勢いらっしゃるわ」

 ツェツィーリアにというより、自分に対して言い聞かせる。
 数は多くとも廊下にいる異形程度だったら、今のリーゼロッテなら問題なく対処できるはずだ。

(そうよ、ジークヴァルト様もすぐ近くにいる)

 夫婦の契りを交わしてから、ジークヴァルトの居場所がなんとなく分かるようになった。
 そこを目指して行けば、行き違うことは絶対にあり得ない。

「じゃあ、わたくしは行くから。すぐに扉の鍵を閉めるのよ」

 浄化の力を流しながら、慎重に扉に近づいた。
 一気に開き、ためらうことなく外に出る。後ろ手に扉を閉めると、リーゼロッテの周囲だけぽっかりと空間ができていた。
 ジークヴァルトの守り石のお陰か、一定の距離を保ったまま異形の者は近づこうとして来ない。
 (かんざし)をひとつ髪から引き抜くと、さよならコンサートの最後のマイクよろしくリーゼロッテはそっと扉の前にそれを置いた。

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