嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「セレスティーヌ様……!」

 イジドーラの体当たりに、またもや狙いが大きく逸れる。
 苛立ちとともに大声を張り上げた。

「すべてはツェーザルのため! なぜそれが分からないっ」

 ザイデル家の駒であるならば、イジドーラは自分を幇助すべき立場だろうに。
 これさえ成し遂げれば、ツェーザルとの未来が待っている。イジドーラを振りきった反動で、短剣を大きく振りかぶった。
 またも体当たりを受け、切っ先は王子すれすれのリネンへ突き刺さった。執拗に邪魔をしてくるイジドーラに肘鉄を食らわせる。

「これで終わりだ!」

 目前の勝利に歓喜の雄叫びを上げた。
 大泣きする王子に刃が突き立てられる。その寸前、しかし握る短剣ごと腕が高く弾かれた。

「ぎゃぁああぁあっ」

 瞬間、耐え難い灼熱に包まれた。
 何が起きたのか分からなかった。逃げ出そうにも指先ひとつ動かせない。
 天井からひと筋の紅い光が差し込んだ。それは喉元へと狙いを定め、紅玉に輝く烙印を白い肌に刻みつけていく。
 途切れることを知らない激痛の中、最愛の(ひと)への想いだけがこの胸に渦巻いた。

 リーゼロッテの目にはその残像が世界でたったひとつの真実に映った。
 例えそれが、重苦しい執着だったとしても。








< 521 / 595 >

この作品をシェア

pagetop