月明かりの下で、あなたに恋をした
彼の言葉に、私は息を呑む。
「……正直、怖いです。また才能がないって証明されるかもしれない」
「それは、見てみないとわからない。今日聞いたあらすじには、確かに魅力がある」
葛城さんの手が、私の手を包み込んだ。
「考えてみてください。今日、無理に答えを出さなくていいです。でも、もし見せてもいいと思ったら……連絡ください」
私は頷くことしかできなかった。
◇
1階ロビーには、警備員が二人待っていた。
「大変お待たせしました。お怪我などはありませんか?」
「大丈夫です」
ゲートが開く。自由への扉だ。
葛城さんと一緒に外に出ると、冷たい空気が頬を撫でた。
夜空には満月が輝いている。
「『月の見える窓』みたいですね」
葛城さんが月を見上げる。
「本当ですね」
私たちは並んで月を見た。
「今日、閉じ込められて……不思議な時間でした」
彼の言葉に私は頷く。
葛城さんが名刺を指差した。
「もし良かったら……また、会えませんか。作品のことだけじゃなくて。あなたと、もっと話がしたいんです」
私の胸が跳ねる。
「私も……です」
私は名刺を大切にポケットにしまった。
「連絡、お待ちしています」