月明かりの下で、あなたに恋をした

彼の言葉に、私は息を呑む。

「……正直、怖いです。また才能がないって証明されるかもしれない」

「それは、見てみないとわからない。今日聞いたあらすじには、確かに魅力がある」

葛城さんの手が、私の手を包み込んだ。

「考えてみてください。今日、無理に答えを出さなくていいです。でも、もし見せてもいいと思ったら……連絡ください」

私は頷くことしかできなかった。



1階ロビーには、警備員が二人待っていた。

「大変お待たせしました。お怪我などはありませんか?」
「大丈夫です」

ゲートが開く。自由への扉だ。

葛城さんと一緒に外に出ると、冷たい空気が頬を撫でた。

夜空には満月が輝いている。

「『月の見える窓』みたいですね」

葛城さんが月を見上げる。

「本当ですね」

私たちは並んで月を見た。

「今日、閉じ込められて……不思議な時間でした」

彼の言葉に私は頷く。

葛城さんが名刺を指差した。

「もし良かったら……また、会えませんか。作品のことだけじゃなくて。あなたと、もっと話がしたいんです」

私の胸が跳ねる。

「私も……です」

私は名刺を大切にポケットにしまった。

「連絡、お待ちしています」
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