社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
「要は、粛々と仕事していれば、咎められる筋合いはないということだ。もちろん、俺は私情を挟んだりしないと誓う。堂々としていいんだよ」
 その言い様は、いっそすっきりするほど清々しい。
 部長とお付き合いしてるのに、社内で堂々としていていいんだろうか。
 本当に大丈夫なの?と心が揺れ動いたその時。
「っ……!」
 足音に気づいて、私はほとんど払うようにして部長の手を振り解いた。
 バクバクと騒ぐ胸に手を当て、首を縮める。
 足音はこちらに近づいてきて、廊下の角から一人の男性が現れた。
「あ、湯浅部長。お疲れ様です」
「ああ、ご苦労様」
 私は自分を隠すように、無駄に背中を丸めてやり過ごした。
 声だけで誰かはわからなかったけど、男性はこちらを振り返らずに通り過ぎていったから、不審に思われた様子はない。
 思わず、肩を動かしてお腹の底から息を吐く。
 そんな私がおかしかったのか、部長は口元を手で隠し、くっくっと声を殺して笑っている。
「~~~部長っ!」
「悪い悪い。最近、ちひろをからかうのが、俺の楽しみの一つに加わってね」
 顔を真っ赤にして抗議する私を、全然悪いと思っていない笑顔であしらう。
 私が頬を膨らませて見せると、ひょいと肩を竦めた。
「わかったよ。当面は、俺たちの関係は全力で秘匿しよう」
 私の頭に手をのせようとして、すぐに思い直した様子でその手を引っ込める。
「会議室の片付けは済んでるか? それなら戻ろう」
 先に一歩前に出て、私を促す。
 それを見て、私も気を取り直す。
「……はい」
 会議室の鍵を閉め、部長の後に続いて歩き出した。
 斜め後ろから、彼の横顔をこっそり窺う。
 そして、気づかれないようにクスッと笑った。
 私はまだ、部長のように堂々としてはいられないけど、いつか野望を達成できたら、その時は――。
 それまではやっぱり、秘匿性高めなまま、この恋を続けていこう。
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