社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
笑顔ーー?
柔らかい目元、口元も緩んでるから、笑っているのだと思う。
私はいつも、人の垣根の向こうに眺めるだけだけど、湯浅部長は大体無表情だ。
顔立ちが整っているせいで、コワモテ感が強調される人。
さらに仕事に厳しいため、鬼神だなんて揶揄される。
そんな部長の表情の変化を目にして、私は思わずキョトンとしてしまった。
こんな優しい顔もできるんだ……。
当たり前と言えば当たり前なのに、新たな発見にワクワクしてしまう。
なのに、部長はすぐに笑みを引っ込めてしまった。
「邪魔をしてすまない。それでは、お先に」
「あ……」
テーブルから離れていく部長に呼びかけようとして、私は声をのんだ。
呼び止めて、どうしようとしたんだろう。
自分でも首を捻りながら、しっかりと座り直す。
そして、『食べてなくなるのが惜しい』とまで言われたお弁当を、ジッと見つめた。
ーー短い時間で、部長から三回謝罪された。
私の方はほとんど話せず、最初から最後まで謝られて終わってしまった会話が、妙に名残惜しい。
私がもっと話し上手だったら、会話を広げて、部長に謝らせたりしなくて済んだのかな……。
なんとなく歯痒い気分に駆られて、ハッと我に返る。
変だな、私。なに考えてるんだろう。
人と関わるのが苦手な私が、もっと話せたらよかったと思うなんて、なんか変だなーー。
気を取り直して、再び箸を持つ。
卵焼きを摘まんで、一口齧った。
ちょっびり甘めの卵焼きは、私の好物だ。
冷めてもじんわりと広がる甘みが、部長の温かみにどこか似てる。
「……また作ろう」
無意識に呟きながら、左手で頬を摩った。
自分が微笑んでいたことに気づき、またしても困惑したものの、休憩時間は残り少ない。
私はややピッチを上げて食事を進めた。
柔らかい目元、口元も緩んでるから、笑っているのだと思う。
私はいつも、人の垣根の向こうに眺めるだけだけど、湯浅部長は大体無表情だ。
顔立ちが整っているせいで、コワモテ感が強調される人。
さらに仕事に厳しいため、鬼神だなんて揶揄される。
そんな部長の表情の変化を目にして、私は思わずキョトンとしてしまった。
こんな優しい顔もできるんだ……。
当たり前と言えば当たり前なのに、新たな発見にワクワクしてしまう。
なのに、部長はすぐに笑みを引っ込めてしまった。
「邪魔をしてすまない。それでは、お先に」
「あ……」
テーブルから離れていく部長に呼びかけようとして、私は声をのんだ。
呼び止めて、どうしようとしたんだろう。
自分でも首を捻りながら、しっかりと座り直す。
そして、『食べてなくなるのが惜しい』とまで言われたお弁当を、ジッと見つめた。
ーー短い時間で、部長から三回謝罪された。
私の方はほとんど話せず、最初から最後まで謝られて終わってしまった会話が、妙に名残惜しい。
私がもっと話し上手だったら、会話を広げて、部長に謝らせたりしなくて済んだのかな……。
なんとなく歯痒い気分に駆られて、ハッと我に返る。
変だな、私。なに考えてるんだろう。
人と関わるのが苦手な私が、もっと話せたらよかったと思うなんて、なんか変だなーー。
気を取り直して、再び箸を持つ。
卵焼きを摘まんで、一口齧った。
ちょっびり甘めの卵焼きは、私の好物だ。
冷めてもじんわりと広がる甘みが、部長の温かみにどこか似てる。
「……また作ろう」
無意識に呟きながら、左手で頬を摩った。
自分が微笑んでいたことに気づき、またしても困惑したものの、休憩時間は残り少ない。
私はややピッチを上げて食事を進めた。