社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
ついこの間、テレビ番組に取り上げられたお店だ。
せっかく近くにあるんだし、今日の帰りに行ってみようと思っていた。
右手で箸を横持ちして、人差し指をスマホに滑らせていると、画面に影が落ちた気がしてーー。
「……?」
「お疲れ様。休憩か? ずいぶん遅いな」
「おっ……お疲れ様です!」
何気なく顔を上げた私は、湯浅部長を目にして、慌てて腰を浮かせた。
「いや、食事を進めてくれ」
「は、はあ……すみません」
中途半端に立ち上がったものの、軽く手で制され私は恐縮しながら腰を戻す。
それでも、遠慮なく食べる気にはならず、箸を置いた。
横に立つ部長を窺うと、その視線は私のお弁当に落ちていた。
「……?」
なんとなく、自分のお弁当を見ると。
「ああ、ジロジロとすまない」
部長は口元に手を遣り、謝罪を口にした。
私がかぶりを振ると、気を取り直した様子で手を離す。
「君はいつも弁当持参なのか?」
「あ、いいえ……たまにです」
「弁当は自分で?」
「は、はい。一応……」
「そうか。なかなか綺麗な弁当だな。食べてなくなるのが惜しい」
「あ、ありがとうございます……」
なんとなく照れ臭くて、私は首を縮めた。
お弁当って茶色くなりがちだけど、今日はポテトサラダの白とプチトマトの赤、卵焼きの黄色で誤魔化していた。
彩り完璧とは言わないまでも、部長の目に綺麗に映ったなら嬉しい。
すると。
「……ふ」
「え?」
微かな吐息が降ってきて、目線を上げた。
「ああ、重ね重ねすまない。こんなことを言われては、食べづらくなるな」
視線がぶつかると、部長はわずかに目を細める。
せっかく近くにあるんだし、今日の帰りに行ってみようと思っていた。
右手で箸を横持ちして、人差し指をスマホに滑らせていると、画面に影が落ちた気がしてーー。
「……?」
「お疲れ様。休憩か? ずいぶん遅いな」
「おっ……お疲れ様です!」
何気なく顔を上げた私は、湯浅部長を目にして、慌てて腰を浮かせた。
「いや、食事を進めてくれ」
「は、はあ……すみません」
中途半端に立ち上がったものの、軽く手で制され私は恐縮しながら腰を戻す。
それでも、遠慮なく食べる気にはならず、箸を置いた。
横に立つ部長を窺うと、その視線は私のお弁当に落ちていた。
「……?」
なんとなく、自分のお弁当を見ると。
「ああ、ジロジロとすまない」
部長は口元に手を遣り、謝罪を口にした。
私がかぶりを振ると、気を取り直した様子で手を離す。
「君はいつも弁当持参なのか?」
「あ、いいえ……たまにです」
「弁当は自分で?」
「は、はい。一応……」
「そうか。なかなか綺麗な弁当だな。食べてなくなるのが惜しい」
「あ、ありがとうございます……」
なんとなく照れ臭くて、私は首を縮めた。
お弁当って茶色くなりがちだけど、今日はポテトサラダの白とプチトマトの赤、卵焼きの黄色で誤魔化していた。
彩り完璧とは言わないまでも、部長の目に綺麗に映ったなら嬉しい。
すると。
「……ふ」
「え?」
微かな吐息が降ってきて、目線を上げた。
「ああ、重ね重ねすまない。こんなことを言われては、食べづらくなるな」
視線がぶつかると、部長はわずかに目を細める。