結婚式を作ったのは、捨てられた私でした

13  選ばれる理由

 「迎えにですか?」
 「そうだ。彼女は優秀だ。これから我がブライダルフェリーチェが更なる躍進をする為には必要な存在なんだ」
 「その割には酷い扱いをしましたね」
 彼は笑顔のままだったが、内心は何とか怒りを抑えているのが私には分かった。
 それが私にはとても嬉しくて目が潤んでくる。
 「既に彼女はなくてはならない存在です。お引き取りください」
 「何を馬鹿な! なあ、紗和‥‥よく考えてみろ‥‥こんな‥‥」
 「こんな‥‥何ですか?」
 「‥‥‥‥」
 私は森岡を睨む。少し尻込みした森岡に変わって真理子が前に出てきた。
 「ブライダルフェリーチェはね! この辺り一円の結婚式を仕切ってるの! こんな弱小会社とは比べ物にならないでしょ!」
 彼は黙って業務実績を記したリストを、二人に見せた。
 「そうですね。設立年的には確かにまだ浅いです。ですが事業規模からすればそれほど小さいとは言えないはずですよ」
 「ん?‥‥これは前に、うちの会社で式を挙げた顧客じゃないか。こんな小口なんか相手には‥‥」
 「ちょ、ちょっと、拓馬! これ!」
 リストの最後の欄に書いてあった企業名を、先に真理子が見つけた。
 目で追っていた森岡は声をあげた。
 「そんな馬鹿な! 東亜銀行組合はうちで契約している!」
 組合に入っている人は、優先的にここの会社を利用する事になる。どうやら無事に話がまとまったらしい。
 「くそ! うちの何処が不評なんだ!」
 さっそく組合に電話していた森岡は、彼の言葉が真実だと確認して、悪態をついた。
 「どうすんのよ! あそこがなくなると、いよいよ、小口の客しかいなくなるのに!」
 「くそ!」
 「拓馬!」
 「うるさい!」
 森岡は立ち上がって真理子の腕を払いのけた。
 「お帰りですか?」
 「‥‥‥‥ぐ」
 彼に何かを言おうとしたけど、言葉が見つからなかったようで、厳しい顔でドアを開けて出ていく。その後を慌てて真理子が追った。
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