甘い生活  Casa al mare
ここは新潟県北部なので、フットワークの軽い人にとっては、さほど遠くはないかもしれない。

「うん。でも、山形市内のような盆地よりも、海沿いで暮らしたいなと思ってるけど」

「磯釣りが好きだから?」

「そうだね。あと、海辺の家にも憧れるなぁ」

「あのー⋯⋯ずっと、言おうか迷ってましたけど、ここ、全然釣れませんよ?」

ついつい、お節介を焼いてしまった。

「え、そうなの?なんだぁ⋯⋯」

お兄さんは肩を落とす。

「でも、すぐ近くに穴場ならありますよ!」

「じゃあ、教えてくれる?」

「ええ」

私たちは、ここから少し歩いたところにある磯へと向かった。

「わざわざありがとうね」

「いえいえ」

彼は釣り糸を垂らし、私は飽きもせずに箱メガネを覗いている。

「おっ!きたきた!」

早速、釣れたようだ。

「ほんの少し場所が変わるだけでも、違うものだね!ありがとう」
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