甘い生活  Casa al mare
「いいえ。遠くから来てくれたのに、坊主じゃ気の毒だもの」

そう言って、微笑みを交わした。

「この穴場を教えてくれたお礼、何かできないかな?」

「え?別に、いいですよ!そんなの」

「でも、教えてくれなかったら、あのままだっただろうから」

私は、ふと思いついた。

「じゃあ、こっちに来て!」

「うん。何処に行くの?」

「お兄さん、髪が伸びてるから」

不思議そうな顔をしている彼を、私は両親の営む床屋へと連れてきた。

「お父さーん!お客さんよ!」

そう言うと、釣り人の彼は少し戸惑っているようだった。

「さっき、お礼がしたいって言ったくれたでしょう?だから、お客さんになってくれたらいいなぁ、って思ったの」

「なるほどね」

ふっと微笑む彼。

「いらっしゃい⋯⋯って、ありゃりゃ、随分な色男のお客さんだねぇ!お前のお友達かい?」

父が尋ねる。
< 4 / 88 >

この作品をシェア

pagetop