甘い生活 Casa al mare

つい、ため息混じりに呟くと、

「そうだね。こんなに純粋で可愛らしい人魚姫には、空気が汚くてギラギラした都会は似合わないと思う」

「人魚姫って⋯⋯」

「いいじゃない。海香子ちゃんは、名前の通り、海の香りがする町で、のびのび暮らすのが似合ってる気がするけど⋯⋯また東京に戻りたい？」

そう尋ねられ、少し考えてしまったが、

「ううん。もう東京はいいや⋯⋯って思ってる」

それは、間違いなく本音だった。

「それでいいんだと思う。スローライフはいいって、さっき言ってただろう？のんびりした田舎暮らしも、都会でバリバリ働くのも、別に優劣なんかないんだから」

清海さんに言われると、含蓄があるというか、やけに説得力があり、確かにそうだと思えるから不思議。

「僕だって、東京に行くのは、必要最低限でいいと思ってるしね」

「清海さんは、田舎のほうが好きなの？」