甘い生活  Casa al mare
梅雨が明け、夏本番を迎えた。

とても嬉しい出来事がある。

初めての家庭菜園で植えた野菜たちの実が、無事に生ったのだ。

「ねぇ、収穫してもいい?」

清海さんに尋ねると、

「もちろん!僕は家庭菜園に関して無知だし、海香子ちゃんも初めてだったから、正直あんまり期待してなかったけど⋯⋯海香子ちゃんが大事に育ててくれたお陰だね」

そう言われ、嬉しくも照れてしまう。

清海さんの憧れる自給自足に、少しだけでも近づけただろうか。

それにしても「大物画家のアシスタント」という肩書と、現実に私がやっている仕事内容のギャップには苦笑いだ。

もしこれが求人情報なら、私のしていることは、雑役や用務員?

それとも、バブル時代のお茶くみOL?

イメージ的にはそのミックスだと思う。

「天気もいいし、清海さん、こういう日はあんまり絵を描く気分じゃないんでしょう?」

「参ったな、お見通しとは⋯⋯」
< 46 / 88 >

この作品をシェア

pagetop