甘い生活  Casa al mare
大漁だったようで、清海さんも嬉しそう。

「肉も好きだけど、自分で釣った魚を食べるのも乙なものだね。おまけに海香子ちゃんの育てた野菜まであるし」

「だけど、アルコールも肉も欲しいのよね?」

「その通り」

この食欲⋯⋯本当に、とてもあんな難解な絵を描く人とは思えなくて、微笑ましい。

いつものスーパーで、肉やアルコールもドサドサ買い、庭でバーベキューをする。

「私、こんな風に庭でバーベキューするのって初めてだから、嬉しい」

「海香子ちゃんが喜んでくれるなら何よりだよ。ほら、どんどん食べな?」

「ありがとう」

手際よく焼いては、自分だけでなく、私の皿にも山のように載せてくれる清海さん。

「なんだか、こんなに楽しい日が続くと、他のところで働く気を失くしそう」

待遇の良さ、仕事も大したことはしていないし、おまけに、覆面画家が、私にだけ、その素顔を見せてくれているなんて⋯⋯。
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